恋に落ちる 目印はない
「アンナ・カレーニナ」という映画を観ました。言わずとしれたトルストイの名作です。昨年、「危険なメソッド」を観たときから気になっていたキーラ・ナイトレイという女優さんが主演で、役柄にぴったりの美しさにはため息が漏れました。極寒のロシアで繰り広げられる豪華絢爛で奔放な愛の物語は、まるで舞台やミュージカルのような仕掛けでもって演出されており、その優雅さには素晴らしいの一言です。また、広大な自然とともに描かれる田舎の領主・リョーヴィンの暮らしと慎ましやかな愛は、アンナの不貞の愛が際だつようでした。社交界との対比という意味でも興味深いです。
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あなた以上はないでしょう
映画館にて、ミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」を観ました。重いテーマを扱いながらも叙情的な恋愛映画のようで、またそこここでフランス語がその言語独特の美しさを放っていました。フランス語をこんなに美しいと感じたのは初めてです。全編を通して不安と悲しみに覆われていますが、決して“泣ける映画”に収まらないところがパルム・ドール受賞に現れているように思います。愛する人が脳裏をよぎる、そんな映画でした。おすすめです。
退屈な日はエンドレス
タル・ベーラ監督の「ニーチェの馬(原題:A torinói ló)」という映画を観ました。ニーチェは出てきません。凄まじい風が吹きすさぶ枯れた大地で、しずかにしずかに営まれる親子の生活が全編モノクロで撮されています。貧しさと不自由が極限状態の生活は、次第にその残酷さを緩やかな速度で増してゆく。それはまるで真綿で首を絞めるような苦しみ。もしニーチェの言うように永劫回帰があるとすればこの親子は来世もこの生活をするのでしょう。
私には場面ごとの意図を完全に読み取ることはできませんが、ニーチェ的思想がわずかに散見される映画でした。思想的な背景に詳しければもっと楽しめたであろうと思います。
私には場面ごとの意図を完全に読み取ることはできませんが、ニーチェ的思想がわずかに散見される映画でした。思想的な背景に詳しければもっと楽しめたであろうと思います。
その角を曲った先で
先月末のこと、映画館にて「ted」を観てまいりました。映画好きな恋人が観に行きたいと言っていたのと、高い前評判をさまざま目にしていたので公開前から楽しみにしており、実際も大変おもしろい作品であったので満足でした。下品なギャグや風刺がつよく効いていて、これぞアメリカンコメディという趣きです。たいそう笑わせていただきました。
ちなみに吹き替えか字幕か迷いましたが、もとの勢いを味わいたくて字幕にしました。テッド(マクラーレン監督)の声がかわいかったのも決め手です。ただやはり、ギャグの言い回しなどは日本人向けになっていたので、もしDVDを借りる機会があれば日本語吹き替えの英語字幕で観てみたいです。
ちなみに吹き替えか字幕か迷いましたが、もとの勢いを味わいたくて字幕にしました。テッド(マクラーレン監督)の声がかわいかったのも決め手です。ただやはり、ギャグの言い回しなどは日本人向けになっていたので、もしDVDを借りる機会があれば日本語吹き替えの英語字幕で観てみたいです。
Rejoice
アレクサンドル・ソクーロフ監督の「ファウスト」を観て参りました。映画館にて。ゲーテの同名戯曲の第一部をかるく撫でたようなストーリーで、どちらかというとそれを下敷きに新たな物語を作ったように感じました。天使や悪魔という概念のない「ファウスト」。かの有名な悪魔、メフィストフェレスも高利貸として登場します。幻想的な描写はほとんどなくて、主人公のファウストは現実に見(まみ)える幻覚のような体験をしているように思えます。私の個人的な感想ですから、違う見方も当然できますけれど。でも私は、私の中にある「ファウスト」のイメージを覆す映画であったためにかえって楽しめました。