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狂いそうで美しい君達

ロード・ダンセイニの「時と神々の物語」を読了。河出文庫。架空の神話による「ペガーナの神々」と「時と神々」を始めとして、「三半球物語」および短篇が収録されています。これはある意味でSFかもしれません。現実には存在しないはずの神々は個性にあふれ、それぞれの役割を持ち、人間を戒め翻弄する様子がおもしろい。ほんとうにペガーナという地や世界のどこかにいるのではないかと疑いさえ憶えます。私も死を迎えるときは、ムングに遭いその印が結ばれるのを見るのかもしれない。

また架空の大地や都市についての描写が緻密で、まるでダンセイニ卿が、実際に目にしたかのようであるのがおもしろい。「われわれの知る野原の彼方」とそれに続く3話からなる物語はとくに目を見張るようにうつくしい情景をたたえており、それらをひときわ魅力的にしているのは、作中の語彙の豊かさや表現のきめ細やかさであると感じます。ダンセイニ作品のファンであるという中野善夫、以下4人による翻訳もすばらしい。原書にも収められていたというシドニー・S・シームの挿絵も、神々の不可思議で愛嬌のある姿を描いていて好きです。表紙になっているもの以外はモノクロなのが残念。しかし幅広い作家に影響を与えたというだけあり、まさにどこを取っても良書です。
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