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サヨナラが心にあふれてしまう

小川洋子の「妊娠カレンダー」を読了。文春文庫。表題作のほか、「ドミトリイ」と「夕暮れの給食室と雨のプール」が収録されています。「妊娠カレンダー」はタイトルから受ける衝撃をそのままに、いっそそれよりも鮮烈な印象をもたらす作品で、読んでいるうちに身体の内側が冷えてゆく感覚を味わうことができ、読了までどきどきしっぱなしでした。とても心地よいどきどきです。ほか二作品はそれぞれどことなく共通する雰囲気をまとっている上、どちらにもうっすらとしたやわらかい恐怖をおぼえさせられました。この三篇の組み合わせは最良かもしれません。松村栄子による解説も、冷静な観点からなる真摯なもので共感できる点が多くありました。

高校生のときに読んだ「博士の愛した数式」以降、氏の作品を読みたいと思いつつも今までなぜか読まずにきてしまったことに驚いています。「博士の~」では、読んでいるさなかに切なくて泣いてしまった、とこのブログに記してありました。然しながら、いまもむかしも、私は「博士の~」タイプよりは今回のような作風のほうが好みです。
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