あの頃、あなたを恋していたんだわ、きっと
久生十蘭の「十蘭万華鏡」を読了。河出文庫。読む前に想像していたよりずっと(よい意味で)俗っぽい語り口であったため読みやすかったです。また題材は、世相や大戦、幕末、海外生活、古代史など多岐にわたっており、作者の知識の広さと深さを感じながら読むことができました。とくに興味深かったのは、「花合わせ」と「雲の小径」という十年もの時間的な隔たりを持つ2つの作品内における、ほとんど同一な台詞の出現です。また、「再会」と「川波」では作品自体のシチュエーションも似ているし、やはりそれぞれ同一にちかい台詞と情景が出てきます。これらも雑誌に発表された年でいえば十三年もの隔たりがある。単に気に入ったフレーズだったのか、それともセルフリメイクだろうか。天才的な作家の執筆の痕跡が垣間見えるようで、ぞくぞくしました。
この文庫のおわりにある澁澤瀧彦による「久生十蘭のこと」という覚え書きのなかに、澁澤が晩年の久生に会った折、久生から「東郷? あんなやつにフランス語ができるもんか」と言われたということが書いてあります。私はこの文庫の前に、東郷青児訳のジャン・コクトーを読んだという偶然があったため驚きました。なんておもしろいんだろう。久生十蘭にもぜひ訳していただきたかった。
この文庫のおわりにある澁澤瀧彦による「久生十蘭のこと」という覚え書きのなかに、澁澤が晩年の久生に会った折、久生から「東郷? あんなやつにフランス語ができるもんか」と言われたということが書いてあります。私はこの文庫の前に、東郷青児訳のジャン・コクトーを読んだという偶然があったため驚きました。なんておもしろいんだろう。久生十蘭にもぜひ訳していただきたかった。
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