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溢れる手を繋いで

江國香織の「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」を読み終えました。高校生のとき、図書室で借りた「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」をすこししか読まずに返却したことを憶えています。理由は喪失しました。このところ男性作家つづきだったため久しぶりの女性作家、そして久しぶりの恋愛小説です。今回の内容はいわゆる王道の恋愛ではないかもしれませんが、自分が恋をしている気分になるには充分のロマンスぶり。それぞれつながりのある9名の女性とそのパートナーを交えた恋愛模様で、さまざまに切り替わる視点や交錯する感情がおもしろかったです。他人の秘密をのぞきみるような感覚でしょうか。どの登場人物にも共感できて、失望できる。とくに草子と衿には好感が持てました。これはまったくの余談になりますが、登場人物たちのハイソサエティな暮らしぶりに作者の嗜好や生活が垣間見えたのも私としては興味のポイントになり得ます。
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